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問題は大人になることじゃない。忘れることだ。映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』感想

リトルプリンス ドラマ・映画・歌

世界的な名作「星の王子さま」を読んだことがありますか?

私がはじめて読んだのは、たしか12~13歳のころ。当時は物語の意味を全く理解することができず、全然面白くなかったです。

その後に読み返すこともなくそれきりで、話の概要さえも覚えてない。私の中ではつまらない作品となっていました。

ところが、あるときテレビの『しくじり先生』で芸人の中田敦彦さんが星の王子さまの解説をしていたんですよ。それを見て「こんなにも深いお話だったのか!」と衝撃を受け、それ以降この作品が大・大・大好きになったんです。

いつかまた読み返したいな~と思っていましたが、なんと映画化もされているんですね。

予告を見てめちゃくちゃ感動したので、映画のほうも観てみました。

原作を元にその後のお話を付け加えるというアレンジが入ってますが、本ではわかりにくかったことが新たなストーリーが加わることでイメージしやすくなっており、大切なことが伝わりやすくなっていたと思います。

 

というわけで、私なりの感想を書き残していきます!

 

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あらすじと感想(※ネタバレあり)

まずは予告をどうぞ!

 

素晴らしい大人になるための母の計画

主人公は9歳の女の子。名門校の入学試験の面接で「どんな大人になりたいですか?」という想定外の質問に答えることができず、試験に失敗するところから物語が始まります。

入学をあきらめていない母親は学区内に引っ越すことで娘を自動的に入学させることを計画。運よく安い家が見つかり夏休みの初日に引っ越しをします。

自分がワース学園にふさわしいか不安に思う女の子に対して、母親は娘の将来を細かく計画した人生設計のボードを見せます。

壁いっぱいに広がる大きなボードには時間ごと、週ごと、曜日ごと、月ごと、年ごと、やるべきことが一生分計画してあり、誕生日のプレゼント一覧表まで書いてあるんです。

スケジュール通りに過ごすことで夏休みの終わりには名門校にふさわしい人間になってるというのが母の考えで、自分の計画した人生設計を見ながら「あなたは素晴らしい大人になれるわ」と娘の将来に思いを馳せて言うのでした。

もちろんこれは、大人である母なりの愛情。女の子もそれを素直に受け入れ、人生設計の表と腕時計のアラームを頼りに、時間に管理されながら過ごす夏休みが始まります。

 

元飛行士のおじいさんとの出会い

引っ越した家の隣にひとりで暮らしていたのが元飛行士のおじいさんです。

おじいさんは昔、星の王子さまに出会ったことがありました。その話を誰かに聞いてほしいと願っていたけど信じてもらえなかった。世界は大人になりすぎていたんですね。

女の子とは、その星の王子さまのお話を通して少しづつ仲良くなっていきます。

王子さまとバラが愛し合っていたこと。王子さまはわがままを言うバラを信じられずに逃げ出したこと。キツネが王子さまに懐いたこと。懐いたから、キツネが別れ際に泣いたこと。

同じバラはたくさんあっても、時間をかけて尽くしたぶん大切なバラだということ。大切なことは、目に見えないということ。そうキツネが教えてくれたこと。

映画内でおじいさんから語られる星の王子さまのお話は、原作の内容を変えることなくそのままです。

 

女の子は最初、子どもらしくない子どもでした。しっかりしすぎて大人みたいな子ども。超現実志向で、子どもならではの豊かな想像力や面白みがない。母親の教育の影響でしょう。

でも、おじいさんと過ごしたり星の王子さまのお話を聞くなかでだんだんと子どもらしさを取り戻していきます。

そんな子どもらしい純粋な心で改めて母を見たときに、大人って奇妙だと感じるようになる。そして思うんです。大人にはなりたくない、と。

そんな女の子におじいさんは「問題は大人になることじゃない。忘れることだ」という言葉をかけました。

 

星の王子さまもありふれた大人になっていた

あるときおじいさんが病に倒れます。女の子は、もう一度王子に会いたいと言っていたおじいさんのために、飛行機に乗って王子を探す冒険へと出かけます。

とある星で王子を見つけることになるのですが、大人になった王子は子どものころのことなんてすっかり忘れていました。

バラのことも飛行士のことも羊のこともキツネのこともバオバブの木も。

おじいさんは、星の王子さまはバラと一緒にいると信じていたけど、違ったんですね。そして、子どものころの純粋さはすっかりなくなりつまらない大人になっていた。

おじいさんの言っていた「問題は大人になることじゃない。忘れることだ」という言葉が思い出されます。

 

大切なことは、目に見えないんだよ

この星で女の子は大人に捕まってしまいます。

素晴らしい大人になれと強要され、おじいさんの書いた物語のメモを捨てられそうになったりとひと悶着ありながら、王子は記憶を取り戻し、飛行機でバラのいる王子さまの星へと帰っていきます。

ところが、ようやく会えたバラはもう枯れていました。それを見て女の子は泣きます。

「飛行士さんもいなくなるんだ。私は大人になって、全部忘れちゃうの?思い出せないの?もう一生?」

飛行士のおじいさんが死んでしまうかもしれないことや、王子さまが全部を忘れてしまってたことが、自分に重なったのでしょう。

「泣かないで…」という王子に「どうしてあなたは平気なの?」と尋ねます。

ちょうどそのとき朝陽が昇るんです。それはいつか、王子さまがバラと一緒に何度も何度も見た朝陽です。

ただのバラじゃないよ。この世にたったひとつしかない、僕だけのバラ。絶対忘れない。全部覚えていれば、いなくならない

王子さまは言いました。バラと過ごした日々のことを覚えていれば、姿はなくてもいなくなるわけじゃない、ってこと。おじいさんのことも同じです。

心で見たときだけ本当のことがわかる。大切なことは、目に見えないんだよ

いつかキツネが教えてくれたこと。それを今度は、女の子に教えてくれたんですね。

 

君はきっと、素晴らしい大人になる

冒険から帰った女の子は、翌朝おじいさんのお見舞いに行きます。おじいさんはベッドで弱っているようにも見えますが、ふざけて冗談を言って見せる姿が本当に優しいし愛らしいんです。

女の子は、おじいさんが書いた星の王子さまの物語をきれいに製本してプレゼントし、思わず泣いてしまいます。そしておじいさんに「泣くのは仕方ないよね、もう懐いちゃったから」と言うんですよ。

このセリフ、お話の中でキツネが王子さまに言ってたことです。「君とは遊べない。懐いてないから。絆ができていないってこと。でも懐いたら、お互いが必要になる」って。

つまり、女の子とおじいさんはキツネと王子さまとの関係とおんなじってこと。また、女の子の中に星の王子さまの話が生きていることが感じられて、なんだか心がじんわりとしましたね。

そんな女の子に、おじいさんは「君はきっと、素晴らしい大人になる」と言って抱きしめてくれるのでした。

 

映画の始まりが「どんな大人になりたいですか?」という問いから始まり、母親が自分の作った人生設計を見ながら「あなたは素晴らしい大人になれるわ」と言っていた流れからのおじいさんの同じ言葉は、何とも言えない感動を与えてくれましたね。

 

なりたい大人に、なれてますか?

大人になると、きちんと働くことやお金を稼ぐこと、時間を無駄にせず効率的に動くこと、そんな風に生きがちになってしまうもの。

肩書きや年収、結婚しているかどうか、子どもがいるかどうか、そんな外側の情報に振り回されたりもしますよね。そこで自分の価値をはかられることもあるでしょう。

でも大切なのはそこじゃない。偉くなってどうするの?人気者になってどうするの?お金持ちになってどうするの?

子どもの王子さまはそう思ったし、私たちも子どものころはもっと純粋に、もっと本質的なところを見ていたんじゃないでしょうか。

 

大人になったら価値観が凝り固まってしまったり、変な固定概念を持ってしまったり、悪い意味で視野が狭くなってきます。

でも子どもって純粋なため、自由度が高いんですよね。それを大人になったら忘れちゃう。不思議。

どんな大人になりたいか…。子どものころの自分を想像して問いかけてみましたが、どうだろう。私、どう思ってたのか思い出せません。

あなたはどうですか?自分がなりたかった大人に、なれていますか?やりたいこと、やれていますか?

今でこそ多様性が認められる社会となり、「好きなことをして生きていこう」「好きなことを仕事にしよう」という社会に変化してきているので、今の時代にはピッタリな映画かなと思います。

 

また、キツネの教えてくれた絆の話。バラと王子さまの積み重ねた時間による愛の話。大切な人がいる方は、その人との関係を思わず振り返ってしまうと思います。

大切なことは目には見えない。映画から伝わってくるのは、この言葉に尽きますね!

 

声優陣が素晴らしかった

リトルプリンスの日本語吹き替え版の声優が本当に素晴らしかったです!

主人公の女の子を鈴木梨央ちゃん、元飛行士のおじいさんを津川雅彦さんが務めておられますが、本当にピッタリ!

鈴木梨央ちゃんは当時10歳ですが、何の違和感もなくめちゃくちゃ上手だな~!って感じですし、元飛行士のおじいさん役の津川さんはとにかく声が優しくて素敵で。

お母さん役は瀬戸朝香さんで教育ママ的なきっちりしている感じがよく表れてますし、子ども時代の星の王子さまの声もかわいらしいんですよね。

映像も綺麗で世界観が素敵ですし、目や耳でも楽しめる映画でした。

 

▽原作はこちら

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